板倉の家における耐震・防火性能
住まいの耐震性能は、木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなどの素材で強さが決まるわけではなく、構造がどのように設計されているかによって決定されます。では、住まいの耐震性能を知りたい時、どのように知ることができるのでしょうか。
住まいの耐震性能を表す数値のひとつに、「壁倍率」があります。建築基準法では、壁倍率の数値で地震の揺れや強風に対する壁の強度に基準を設けています。壁倍率は、数値が大きいほどその建物の耐震性能が高く、1.0以上で、震度5程度の地震力に耐えられるとされています。
耐震性能の証明
板倉の家は、どれくらいの耐震性能があるのでしょうか。板倉構法の実大モデルを用いた耐震実験を行った結果があります。
実験に用いた落とし込み板壁実大モデルは、右図のような構造です。仕上げ方のちがいで、真壁タイプと大壁タイプの2種類ありますが、両タイプとも柱に設けた溝に厚さ30mmの杉の板を水平に落としこみ、その片側に今度は縦板を添わせ、横板と縦板の交わる場所に釘を打ちつけています。この壁の上部に横から力を加えた時、壁がどのくらい平行四辺形に変形するかを測定しました。
耐震性能2
実験から、このような落とし込み板壁を用いた板倉構法の住まいは、大地震に対して、壁が変形しても大きく倒壊することなく、地震に抵抗し続ける性能を持つことがわかりました。
板倉構法の壁倍率を算出し、最終的に壁の仕上げ方と壁の長さ(柱と柱の距離)別の4種類で、国土交通省の認定を得ることができました。
国土交通省認定取得 板倉構法壁倍率
略称 壁長(cm) 壁倍率
真壁 182 1.1
91 2.2
大壁 182 0.7
91 1.4耐震性能
国交省認定へ向けて板倉構法が取り組んできたこと
開発プロジェクトの目標は、地震の多い日本で、都市部でも地方でも、安心して住んでいただける板倉構法であるため、建築基準法に準拠した耐震基準と防火基準を、国交省大臣認定で取得することでした。
研究開発の母体として、NPO木の建築フォラム内に「伝統木造研究会」を立ち上げ、大工工務店の全国組織である全国中小建築工事業団体連合会(全建連)と全国建設労働組合総連合(全建総連)に参加を呼びかけ、これら組織の共同開発事業として、板倉の家開発プロジェクトは展開されました。
伝統木造研究会のメンバーには、各分野での研究者・認識者を招き、専門委員会が設けられました。
栗田建築設計では、安藤教授の呼びかけに賛同し、研究会へ参加出資し、専門委員会の指導の元、資料を提示したり、提案及び要望を述べたり、中部地区講演会開催の際には責任者として協賛しました。
国交省認定取得に向け、日程・予算・形状・仕様・取得レベル・数値目標を決めた協議会を開催し、実大実験を経て認定を取得することができました。上記はこの実験の結果です。一連のプロジェクトは、会員の出資・全建連・全建総連・国交省補助金を活用しての取得であったため、取得内容を告知する講習会が各地で開催され現在に至っています。